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皆様、こんにちは。こにでございます。2回続けて第九の話をしたので、今日は第1部の日本の歌・ドイツの歌の話をしましょう。
 
国境なき合唱団のコンサートは、第1部が日本の歌・訪れた国の歌、第2部が現地オーケストラとの第九、というステージ構成になっています。第1回のウィーンでは、日本の歌・ウィーンの歌、第2回にシンガポールでは、現地の日本人のお客様が多いだろうということから、すべて日本の歌で構成。そして第3回の今回は、日本の歌・ドイツの歌というわけです。
 
この3回のコンサートを通じて歌ってきている/歌うのが「赤とんぼ」と「故郷」。昨年のシンガポールから加わったレパートリーが「そうらん節」。日本の童謡、唱歌、民謡と、いずれも日本を代表する、というか象徴する歌ですね。日本人なら知らない人はいない歌、かつ海外のお客様に日本の音色として胸を張って御紹介できる歌ですが、特に海外で暮らしていらっしゃる日本人のお客様にとって、「赤とんぼ」と「故郷」は、本当に胸を熱くするものがあるようで、ウィーンでもシンガポールでも、駐在員の方や現地在住の日本人の方が、これらの歌を聴いて目頭を熱くされた、ぐっと胸にきた、というお話をよく伺います。ありがたい話です。
 
そうなんですよね。前回の寄稿で、私も4年間ほど米国で暮らした経験があると書きましたが、音楽って直接感情に訴えてきますから、海外で聴く素朴な日本の歌って、海外在住の日本人にとって、本当に感動的なんです。現地の日本語放送やネットを通じてJ-POPを聴く機会はふんだんにあっても、子供の頃に自分も歌った童謡や唱歌を、コンサートホールできちんと聴く機会、正面から向き合う機会って、まずありませんからねぇ。郷愁とかそーゆーんじゃなくて、自分の中の日本人の核が揺すぶられる感覚なんですよ。音楽の力って本当に偉大だと思います。
 
で、その「赤とんぼ」なんですが、歌う方にとって、これくらい難しい歌はない(^^;)。なんでー?子供だって歌ってるじゃん。メロディも簡単だしー、と思うでしょ?あたいだって、そう思ってましたよ、歌う前は(__;)。編曲が難しいとかじゃありません。主旋律以外のメロディが難しいというのでもありません。各パートとも音取りは簡単です。すぐ歌えるようになります。そういうことじゃないんです(^^;)。じゃ、なんなの?(-.-)と聞かれたら、一言、ごまかしがききません(-.-)と答えましょう(笑)。
 
歌や合唱経験のある方には分かって頂けると思うのですが、メロディーラインがシンプルな歌ほど「歌」にするのが大変です。これが第九のクライマックスみたく、音程が上下に飛び回りながらパカパカパカパカ歌う曲なら、勢いと力まかせで(をい)歌っちゃえるんですが、シンプルなメロディーライン、情感を込めたゆったりしたテンポ、ピアノ(弱声)を主体とした構成、そしてシンプルな和声。薄いガラス細工のようにデリケートな歌なんですねぇ、「赤とんぼ」って。んでもってこの歌、アカペラ(無伴奏曲)です(^^;)。だから、ほんっとーーーにっ、ごまかしがききません(^^;)。
 
更に言えば、合唱やる者にとって、実はドミソの和音くらい難しいものはありまへん。んで、ピアノ(弱声)の発声というのが、また難しい。ピアノは「小さく」ではなくて「弱く」なんですね。コンサートホールの隅々まで通る/響く「弱い音」がピアノです。こうした歌唱技術として難しいの二乗のところへ持ってきて、日本歌曲は「意、言外にあるを尊ぶ」の精神で出来てますから(笑)、歌詞をきちんと伝えた上で、歌詞の外にある世界を創り出さなきゃならん。情感の世界ですね。「赤とんぼ」の場合、幼き頃の母や姐やと一緒だった頃への郷愁ということになるようですが、この情感の世界を創り出す為には、決して緊張しちゃいけまへん。余裕のよっちゃんで歌えてないとダメ。
 
だからねー、もう歌い込むしかないわけですよ(笑)。これは「故郷」にも「そうらん節」にも言えますね。日本の歌って情感を創り上げる世界です。各歌を自分のものにして、そして合唱として心を一つにして歌わないとね。頑張りましょー>みなさま。
 
あ、ところで「赤とんぼ」に関する面白かった話。国境なき合唱団の練習の時に教えて頂いた話です。歌詞の「ゆうやけこやけの あかとんぼ」の「あかとんぼ~」の主旋律って、ラドドレミーですよね。最初のラが高音で、そこにアクセントがある。でも「あかとんぼ」と普通に発音すると、「か」にアクセントがきませんか?実はこれって長年の疑問だったのです(^^;)。いまどきの歌と違って、大正から昭和初期生まれの童謡・唱歌って、日本語の語感・アクセントと旋律が一致していて歌いやすいのが常だから、なんでー?と思っておったのですよ。そしたら、なんのことはない、作曲当時の東京下町の「あかとんぼ」の発音は、「あ」にアクセントがあったのだそうです。だからそのアクセントにあわせた旋律になっていると。うむー、日本語、奥が深いです(^^;)。
 
さて、ドイツの歌の方です。今年歌う曲は、J.S.バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」と、パウル・リンケの「ベルリンの風」。ベルリンで行う、ベルリンの壁崩壊を祝うコンサート。そこで偉大なるバッハの宗教曲と、ベルリンっ子気質を楽しく歌い、ベルリン市歌ともなった、ドイツ・オペレッタ歌曲の組み合わせですねー(^^)。
 
「主よ、人の望みの喜びよ」はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」と同じくらい有名な曲なので、知らない人はいないと思いますが、少なくともこにさん、歌うの初めてです(^^;)。メロディと和声の神様、バッハ先生の曲ですから、音取りは簡単ですが、和声進行が絶妙なので、これをきちんと合唱にするには、かなりの練習が必要そうです。で、当たり前ですが、ドイツ語です_| ̄|○。逐語訳探して練習しますー(;_;)。
 
「ベルリンの風」の方は、ほとんどユニゾンだしーっと思ってますが、さて?(笑)。こっちは、手拍子入れて賑やかにとゆー感じかなと思ってますので、先生、そこんとこ宜しくお願いします(笑)。
 
で、こうしたドイツをはじめ、海外の歌と、日本の歌の違いってなんだと思います?いろいろとあるのでしょうが、こにさんの場合、まず浮かぶのが、歌詞の押韻の有無なんです。おーいん、ってなによ?(^^;)。シャチハタ?、それ、おいしいの?、などど、最初この言葉を聞いた時に思ったこにさんですが、歌詞に限らず、海外の詩は、すべからく「韻」を踏んでるとゆーことに気がついたのは、英語が分かるようになってからでした。歌詞の行末の語尾が同じ発音のペアを必ず組んでいて、これを「韻を踏む」または「押韻」とゆーのだそうです。
 
例えば、歓喜の歌だと;
Freude, schoner Gotterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!
 
ね、Gotterfunkenとfeuertrunken、ElysiumとHeiligtumの語尾が同じ発音でしょ?第九の歌詞を、つらつらと見て頂くと、こうした語尾が同じ発音のペアが規則的に使われていることに気づかれると思います。「主よ、人の望みの喜びを」も「ベルリンの風」も同じ。ラテン語のミサ曲の祈祷文だって、カルミナ・ブラーナだって、シューベルトのドイチェ・リートだって、フランスのシャンソンだって、ビートルズやローリング・ストーンズやマドンナやビヨンセの歌だって、すべからくそう。
 
なんかね、「韻律」って規則があって、これが詩のリズムを作り出してるんですね。特に、こにさんの大好きな、1920年代の米国に生まれたスタンダード・ジャズの歌詞は、この韻で洒落っ気一杯に遊んでる歌が多くて、もう歌詞よりも韻のリズムだけで楽しむような歌まであります(笑)。(英語、特に米語って、そもそもリズムの言語ですからねー)。こうした「歌詞そのものが押韻でリズムを持っている歌」というのが海外の歌。だから韻を意識しながら歌うと、また楽しいわけです。
 
では、日本の歌は?というと、韻がなくても、リズムがあるのではと。そう、七五調です。
 
ゆうやけこやけの あかとんぼ 
 
おきのかもめに しおどききけば
 
うたたねに こひしきひとを みてしより ゆめてふものは たのみそめてき
 
さんぜせかいの からすをころし ぬしとそいねが してみたい
 
じんせいらくありゃ くもあるさ
 
きたぞわれらの うるとらまん
 
など、など、など(笑)。
 
このところのJ-POPの歌詞には、こうした日本人にとって心地よい歌詞のリズムがなくなってしまっている気がするのですが、日本語が持つこの七五調のリズムと、言葉のアクセント・ニュアンスが、旋律と強く結びついて、先にも書いたように、「意、言外にあるを尊ぶ」の精神のもと(笑)、歌詞をきちんと伝えた上で、歌詞の外にある情感世界を創り出すのが、日本の歌の特徴かなーと。日本人なんだから、日本語の言葉を大切に、ニュアンスを大切に歌うことが大事ですね。
 
ところで、日本の歌でも押韻で成り立ってる歌がありますよねー。そう、ラップとヒップ・ホップです。どちらも旋律より歌詞そのものののリズムと響きで楽しむものだから、これは当然の帰結かなと。
 
では、海外の歌の訳詞はどうでしょう?うむー、こればかりは、日本語に置き換える為に、韻のリズムの面白さをあきらめているものがほとんどですねー。それでも、上田敏先生のように、ブラウニングの “All's right with the world!” を「すべて世は事も無し」と、本当に見事な七五調の日本語に訳して頂ければ素晴らしいのですが、どうも昨今は、旋律に合う言葉をあてはめるだけという印象。
 
こにさんの知る限りでは(もっとも、知ってる世界は恐ろしく狭いんですがね^^;)、ブロードウェイ・ミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』を劇団四季が翻訳上演した時、和田誠さんがされた訳詩の仕事が最高峰です。アイラ・ガーシュインの歌詞を適確に訳して、日本語の歌として違和感の無い歌詞にしているだけでなく、なんと日本語でも韻を踏んで、日本語の歌詞そのものに押韻のリズムをつけてる!これは凄いです。和田誠さんは、御自身が監督された映画『怪盗ルビィ』の主題歌を作詞された時に、既に日本語で韻を踏むことを試みられていたという記憶があるのですが、この『クレイジー・フォー・ユー』での和田誠さんの仕事には脱帽でした。
 
さて、(今回も^^;)長々と与太話をしてしまいましたが(^^;)、歌声にできて、楽器には決してできないもの、それが「言葉」です。歌詞の背景と意味を理解し、その世界を言葉と音楽で創り上げ、伝えるのが「歌」だと思います。皆様と御一緒に、ベルリンで「歌」を歌えることを、いまから本当に楽しみにしていますー(^^)/。
 
ではでは、またね
こに
 
【オマケ】
今年の「日本の歌・ドイツの歌」の個人練習の参考になる音源を探してみました。「赤とんぼ」や「故郷」は、山ほどネットでMIDI(コンピュータ音源)ファイルが公開されているのですが、数々の編曲者の方がいらっしゃるので、我々がコンサートで使う編曲と一致するものを見つけるのは、なかなか難しいですねー。なんとか一応、楽譜と一致する音源を見つけましたので、御参考まで。
 
 ・「赤とんぼ」:楽譜通りの演奏です。こちらですー
 
 ・「故郷」  :MIDIファイルは見つかりませんでしたが、かの京都エコーが
         この楽譜で歌った演奏をネットで買えます(150円だよー)。
         例えばこちら。iTune Storeでも買えます。
 
 ・「そうらん節」:男声合唱用に一部パートを組み替えていますが、
          全体として同じ編曲・和声進行です。
          一覧はこちら、音源そのものはこちらですー
 
 ・「主よ、人の望みの喜びよ」:もう山のようにあります(笑)。例えばこちらですー
 
 ・「ベルリンの風」:楽譜通りの合唱編曲は見つかりませんでしたが、
           まぁ、ほとんどユニゾンですから(^^;)。MIDI音源はこちら
           ドイツ語での歌唱はyoutubeに沢山ありますね。例えばこちらですー。

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